2002年論文本試験 憲法1問目再現
1 本問における図書館長Cの閲覧禁止処分は、地方自治法
244条2項に反し違法ではないか。同条項は、地方公共団体
は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを
拒んではならない、とするところ、CがA市の図書館運営規則に
基づいてしたかかる処分が「正当の理由」に基づくものといえる
か、当該規則の合憲性と関連して問題となる。
2 そもそも、閲覧禁止を規定する当該規則は検閲にあたり憲
法21条2項前段により絶対的に禁止されるのではないか。思
うに、検閲とは、行政権が表現行為に先立ちその内容を審査
し、不適当と認めるものの発表を禁止することをいうところ、
雑誌、新聞等の定期刊行物は既に発表されているものである
から、これにあたらない。
3(1) としても、当該規則の定める閲覧禁止処分は、知る権利
を侵害するものではないか。まず、知る権利については明文な
く、憲法上、保障されるものかどうかが問題となるも、表現の自
由(21条)は受け手の存在を当然の前提とするものであるから、
21条の表現の自由の一環として保障されるものと解する。
そして、知る権利には、国家により情報の受領を妨げられ
ない権利としての消極的権利と、国家に対し積極的に情報開
示を求めることができる権利としての積極的権利の両面が包
含されるものと考える。
(2) もっとも、知る権利といえども絶対無制約ではなく、他の
人権との矛盾・衝突を調整する衡平の原理たる公共の福祉
(13条)による制約を受ける。
それでは、その審査基準はいかにあるべきか。
思うに、知る権利は国民が政治的意思決定をするために不
可欠の情報を受領する権利であり、これが制約されると民主
政の過程でその瑕疵を修復することは困難であるから、厳格
な基準が妥当するものと考える。もっとも、知る権利のうちの
積極的権利たる側面については、権利内容が抽象的であり、
行政目的やプライバシー権等への配慮が不可欠であるから、
立法をまって初めて具体的権利性が認められる抽象的権利
であり、立法で認められた開示範囲の当否については明白性
の原則が妥当するものと考える。
(3) A市の図書館運営規則は、定期刊行物の閲覧を制限す
るものであり、既に市場に流通している情報についての受領
を制約するものといえるので、知る権利の消極的権利たる側
面につき制約を課するものといえる。
とすれば、厳格な基準により審査すべきであり、しかも、少
年法61条との抵触判断は内容面に着目した規制であるから、
明白かつ現在の危険の基準(@害悪発生の差し迫った危険が
明白であり、A害悪が重大なものであり、Bかかる害悪を避け
るため当該規制が必要不可欠であること)により審査すべきで
ある。
これをA市の図書館運営規則についてみると、少年事件につ
いて本人を推知し得るような記事の掲載された定期刊行物の
閲覧を認めることにより、何らかの差し迫った危険が明白に認
められるとはいえない(@)。また、その害悪も既に一般に刊行
された定期刊行物を利用者の求めに応じて閲覧に供するのみ
で重大なものとはいえない(A)。
よって、当該規則は知る権利を侵害するものとして、憲法
21条1項に反し違憲である。
(4) 尚、少年法61条の規定をもって、憲法上の権利である知
る権利の制約を正当化することはできず、刑事手続の適正の監
視といった側面からくる実名報道の意義も軽視すべきではない。
また、そもそも同条は罰則の定めもなく、報道機関等に少年
のプライバシー権を侵害するような態様での報道を自粛するよう
求めたものに過ぎないと考える。
4 以上により、違憲な図書館運営規則に基づいてなされた処分
に「正当な理由」は認められず、本問閲覧禁止処分は、憲法21
条及び地方自治法244条2項に反する違憲・違法なものである。
以上