判例

S24.05.21 第二小法廷・判決 昭和24(オ)17 土地売買契約無効確認等請求(第3巻6号209頁)

判示事項:

一 控訴状に貼付すべき印紙の不足している間になされた訴訟行為の効力。

二 農地調整法にいわゆる農地にあたらない事例。

要旨:

一 控訴状に貼付すべき印紙が不足していたとしても、その後その不足額の印紙が増貼された場合には、右補正前になされた弁論期日判決言渡期日の各指定及びその告知は、すべて有効である。

二 約一反歩の他人の宅地を数年来耕作してきた場合であつても、その宅地は所有者が後日自己の住家を建築するつもりで何人にも賃貸せず空地として残しておいたものであること、その後太平洋戦争が勃発するに及び次第に塀が壊されその一部に防空壕が造られたばかりでなく、勝手に蔬菜類を作るものもできたこと、また耕作者がこれを耕作するに際しても所有者の承諾を得ず、その耕作の状況は馬鈴薯畑約八十坪の外人参、ささぎ、牛蒡、胡瓜、葱、唐黍等の蔬菜園であつて、耕作者は農業会に加入せず、また土地は食糧供出の対象になつていないことの認められるような場合には、右土地は、普通の家庭菜園であつて農地調整法に定められた農地に該当するものとはいえない。

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人弁護士一条清の上告理由第一点について。
 しかし民事訴訟法第一五二条第四項によれば「口頭弁論ニ於ケル最初ノ期日ノ変更ハ顯著ナル事由ノ存セサルトキト雖当事者ノ合意アル場合ニ於テハ之ヲ許ス」と規定しておるから最初の口頭弁論期日であつても当事者の合意のない場合には顯著なる事由のない限り期日の変更申請を許容すべきではない。上告人の代理人は原審において最初の弁論期日の変更を申請しその理由は論旨にいうところと異なり前日に訴訟委任を受け準備ができないというのであるが右代理人は本件第一審の訴訟代理人であるから準備かできないということは理由にならないのみならず期日の変更について相手方の同意を得られなかつたのである。そこで原審は右申請を許さず弁論を為さしめ事件が判決を為すに熟すると認めて結審して判決をしたのである。ただ本件控訴状には貼付すべら印紙が不足であつたに拘らず補正命令を出すことなく弁論を進行して結審したのであるがその為めに原審が裁判をするに熟しないのに結審したものであると云うことはできないのである。そしてその後補正命令を出して印紙は増貼せられ控訴状の瑕疵は補正されているのであるから原審の審理手続には何等違法の点はない。(民事訴訟用印紙法第一一条参照)。従つて原審には上告人をして訴訟を為さしめなかつたというような不当の措置はなく論旨は違憲に名を籍りて、理由なき原判決の違法を主張するに過ぎないのであつて、採用の限りでない。
 同第二点について。
 本件控訴状に貼付すべき印紙が不足であつたが後日その瑕疵は補正されたことは前点に対する説明のとおりである。そして右補正された以上はそれまでの間に為された弁論期日、判決言渡期日の指定及びその告知は有效であること勿論である。
 所論は右と反対の見解に立脚しその無效なることを前提とするのであるから論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし原判決の「甲第一号証第四号証乙第一、二号証第四、五号証」とある第四号証が甲第四号であり第四、五号証が乙第四、五号証であること又所論「第五号証」及「第三乃至第五号証」がいずれも乙号証なることは判文上明かであるから論旨は理由がない。
 同第四点について。
 しかし原判決は本件土地の中建物の敷地及び建物利用に必要な部分を除いた残地は一、前所有者Aにおいて後日同地上に自己の住家を建築するつもりでこの部分は何人にも賃貸せず空地として残しておいたこと、二、その後太平洋戦争勃発し右空地の部分について他から借地申込を受けるようになつたが右Aはそれに承諾を与えず依然これを空地として残しておいたこと、しかし右空地は次第に塀か壊されその一部に防空壕が造られたばかりでなく勝手に蔬菜類を作るものもでてきたこと、三、訴外BはAの承諾を得ないのに拘らず昭和一七年中から勝手に右空地の一部約一反歩に蔬菜類を作つていたが昭和二元年中から右Bの四男で分家していた上告人において引続き單獨で勝手に右約一反歩の土地を耕作してきたこと、右耕作の状況は馬鈴薯畑約八十坪の外人蔘、ささぎ、午蒡、胡瓜、忽唐黍等の蔬菜園であること、そして上告人は盛岡市農業会に加入している者ではなく、又右土地は食糧供出の対象となつたこともないものであること、等の事実を認定し、右約一反歩の土地は右認定の状況から考察すると普通の家庭菜園に過きず農地調整法に定められた農地に該当しないものと判断したのである。そして右認定事実は原審の挙示する証拠によつて十分に認定できるのであり右認定された状況の下においては右土地は家庭菜園の域を出ないもので農地に該当しないと認めるのが相当であるから原判決には所論の如き違法なく論旨は理由がない。
 よつて民事訴訟法第四〇一条第八九条第九五条により主文の通り判決する。
 この判決は全裁判官一致の意見でめる。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
 裁判官藤田八郎は出張中につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一