判例
S52.04.15 第二小法廷・判決 昭和51(オ)1174 建物収去土地明渡請求
判示事項:
書証の成立の真正についての自白の裁判所に対する拘束力
要旨:
書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束しない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人桑名邦雄、同中村喜三郎の上告理由書記載の上告理由第一点及び第二点について
論旨は、所論の各書証の成立の真正についての被上告人の自白が裁判所を拘束するとの前提に立つて、右自白の撤回を許した原審の措置を非難するが、書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束するものではないと解するのが相当であるから、論旨は、右前提を欠き、判決に影響を及ぼさない点につき原判決を非難するに帰し、失当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第三点ないし第一一点及び上告状記載の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、上告理由第一、二点について裁判官吉田豊の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
裁判官吉田豊の意見は、次のとおりである。
私は、上告理由第一、二点についてその論旨が採用できないとする結論自体には反対でないが、その理由とするところは多数意見と異なる。すなわち、記録により明らかな本件訴訟の経過に照らすと、被上告人が所論の各書証(委任状)の成立を認めると陳述したのは、これら委任状の受任者名、委任事項、日付が被上告人以外の者によつて記入される以前の、右各欄が空白のままの委任状用紙に、被上告人が署名押印したことだけを認めた趣旨であり、被上告人が上告人の主張するような事項に関する代理権をAに授与するにつき作成した文書として、その成立の真正を自白した趣旨ではないことが明らかであつて、原判決のいうように被上告人がいつたん右自白をしたのちこれを撤回した場合にあたるとはいえない。したがつて、論旨は、この点において前提を欠くことになり、失当であると考える。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 吉 田 豊
裁判官 岡 原 昌 男
裁判官 大 怐@ 喜 一 郎
裁判官 本 林 讓
裁判官 栗 本 一 夫